GROOVE TUBE FES. ’19レポート


GROOVE TUBE FES. ’19(以下gtfes)が5月12日に千葉横芝光町の屋形海岸にて開催された。
2013年から始まり、嵐による一度の中止(2016年)を経て今年で6回目を数えるドネーション方式のフリー野外音楽イベントである。

出演者の顔ぶれは年を追うごとに充実し、主催者の言う「最終回みたいなラインナップ」は今年も最高を更新してしまった。



トップバッターからどうかしていた。
千葉の英雄JAGUARさんに憧れ、出演バンドを独特の間合いで紹介する芸風は今やgtfesの名物となったチーターさんが、今年は自らバンドを引き連れてオープニングアクトをするというのだ。
KISSやモトリー・クルーを彷彿とさせるバンドメンバーと共に、意外とギターもちゃんと弾けるチーターさんは輝いていた。
オーディエンスから上がる歓声に予期していなかったのか、若干の照れが入るチーターさんがステージに招き入れたのは今年一番のサプライズ、JAGUARさんだ。


まずその本物の佇まいにおののく。大きい。そして尖っている。喋る物腰は柔らかく、極端に腰が低い。
観るものを一発で虜にしたJAGUARさんはやおら曲を始める。ボーカル入りの音源にその場で歌を重ねていく独特の手法だ。
歌の語尾の上がり方は間違いなくボブ・ディランの影響が伺え、キラキラしたシンセの音色はサイケデリックだ。

3曲終えたあとにチーターバンドが再び登場し、ついにJAGUARさんとチーターさんのステージでの共演となった。
聞くところによると今回の共演はJAGUARさんから逆オファーを受けたとのこと。「好きだと言い続ける力」は時として、想像もしなかった未来を生み出すことがある。

 


2番目に登場したWOOMANは4人組のバンドで、リハでの音出しと本番の印象が結構違う。
ニューウェーブ、ポストパンクを通過し、シンプルながらもどこか影のあるバンドサウンドに到達したというような音像だ。ボーカルの声が良い。
ベースはスタインバーガーを使っている。インタビューを読むとKing Gizzard & The Lizard Wizardの名前も上がったりして、なるほど複雑な、と思う。

一曲終わるごとにマイクに乗らない声で「気持ちいい」とつぶやく様子に、ステージ正面に太平洋が広がるこのロケーションが誇らしく、地元でもないのになんだか嬉しくなった。


3番目は楽しみしていたKONCOS。リーダーの古川 “TA-1” 太一さんは前日熊本でオールナイトのパーティからそのまま飛行機で当日入りとのこと。
だいぶ前にアストロホールのHARVARDとの対バンライブを観た記憶はあったが、まったく新しいバンドを見たような気分だ。
着るもの含めてバンドとしての立ち姿がかっこよく、演奏するときのアグレッシブな動きも新鮮だった。

ステージのヤグラによじ登り、グリーンの芝生へダイブする太一さん。いつか誰かがやってくれないかなと思っていたことをやってくれたのはKONCOSだった。

 


4番目は2度めの登場となる苫小牧の雄、NOT WONKはスリーピースのバンドだが、前回と比較して数段パワーアップし、出音はとても3人で出しているようには思えない程の音圧。
しかも静寂からの轟音への振れ幅のダイナミクスが凄まじく、PA含め今年のラインナップではもっとも強度のある音だった。

ギターボーカルの加藤さんは口数は少ないものの、北海道の家から見える山が目の前の海に似ていることや、クソみたいな現状でも曲をつくることへの意気込みをMCで語ってくれた。
パンクからネオアコ、ジェフ・バックリィやサウスロンドンのKing Kruleにも通じるバンドの音楽性は日本では孤高の存在とも言えるかもしれない。
そしてもし、bloodthirsty butchersの吉村さんが聴いたらきっと気に入っただろうと思う。

 


5番目は待望のHomecomingsだ。今や洋楽、邦楽の境界分けはあまり意味がないとも言われるけれど、数々のバンドがその境界を溶かすことを試み、挫折してきたように思える。
そうした中でHomecomingsは日本語詞と英語詞の間を軽々と行き来し、同時にサウンドはPains of Being Pure at HeartやMac DeMarcoなどとの対バンでもまったく違和感なく響かせることのできるバンドだ。

ライブではドラマーも含めた三人のコーラスワークが特に素晴らしく、アナログフィッシュやフィッシュマンズのように「歌の上手いドラマーがいるバンドのライブは良い」の思いを強くした。
そしてライブで見えてきたギターの福富さんの、バンド内立ち位置がとても良かった。

 


6番目のLEARNERSは お目当ての人も多かったはず。とにかくライブが良いという評判が絶えない。
チャーベさんの膨大な音楽知識に裏付けされたカヴァー曲をかっこいい人達が元気よくジャカジャカやるコンセプトに加えて、バンドの演奏力があるので説得力が半端ない。
特にギターのチエさんの大きなグレッチから繰り出されるフレーズの数々に完全にやられてしまった。
周りでおとなしく観ていた大人になりたくなかった大人たちは『Teenage Kicks』で完全に壊れてしまい、気づいたら前方に突っ込んでいた。

最後に紗羅マリーさんがステージを飛び降り、モーセのように人波をかき分け、みんなの心を鷲づかみにしてライブは終了。

 


7番目はチーターさんが「ミスターGROOVE TUBE 」と紹介していたように、まさにgtfesの顔とも言うべき曽我部恵一さんだ。
まだステージと呼べるものさえ無い時からほぼ毎年ここで歌を歌ってくれている。5月のこの時期は野外イベントが他にもたくさん開催されるタイミングでもあり、曽我部さんもRHYMESTERの人間交差点出演後に駆けつけてくれたのだ。

夕暮れが近づいて、頭上には成田空港へ着陸する飛行機のライトが意外と近く見えてくる時間。曽我部さんはそうした風景を切り取るかのように、まるで即興のように、歌にしていく。
MCでも言っていたけど本当に曽我部さんはふらつとこの海岸に来るらしい。ラストの『サマーソルジャー』は最高で、静かに激しく、感極まった。

 


ライブパートのトリはHave a Nice Day!、ハバナイである。
オファーはしていたものの、スケジュールの都合により当初は今年の出演は見送られたとの話も聞いた。ところがラインナップ発表後に出演可能となり、まさかの直前大逆転。
それにしても、あのハバナイである。バンドのみならずオーディエンスを含めたあのモッシュピットが、この屋形海岸で発生するのか正直不安なところもあった。
しかしメンバーがステージに登場し、サウンドチェックを始めるとそんな思いは杞憂に終わった。
始まっていないのに、もう始まっている。ジョン・スクワイヤが「これからはオーディエンスが主役の時代なんだ」と宣言してから四半世紀を経たこの場所で、その光景を目の当たりにして冷静ではいられなかった。
ダイブする人やシャチが宙を飛び交う中、みんな弾き返されながら何度も何度もモッシュピットに突っ込んでいく。
空が焼けてきた頃、浅見さんが「夜がやってきた」 とつぶやきラップトップからスタートさせた最後の曲『わたしを離さないで』はまるでこの日のための歌のようだった。

“夜明けの海辺で みんなで騒いで 手をとり 同じ夢を見よう”
夕暮れとともにハバナイはステージを後にし、夜のパーティはYODAさんとSUGIURUMNさんに委ねられた。

 

 

JAGUARさんを含めると合計10アクト。質、量ともに過去最高のボリュームで終えた GROOVE TUBE FES. ’19はネクストステージへの扉を開けた感がある。それは出演者だけでなく、あの場にいたあらゆる人が、それぞれの場所で好きなように、自由に楽しんでいる様子がありありと感じ取れたからだ。
来年が待ちきれない。

 

text by 黒田直樹 (twitter  @warp2warp)

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